一人暮らしを始めた夏のこと

一人暮らしを始めたのは3年ほど前のことだ。

社会人になったタイミングで実家を出て、初めての一人暮らしが始まった。

最初のうちは、生活のペースが全く掴めなかった。誰もいない部屋に帰ること、何をするにも自分で決めないといけないこと。そのひとつひとつに、まだ慣れきれない落ち着かなさがあった。

それでも少しずつ日々を重ねるうちに、生活のリズムのようなものが自分の中にできていった。外に出る機会も増えて、近所のカフェにふらっと入って一人で過ごす時間も増えていった。目的があるわけではなく、ただそこにいる、というだけの時間。

不思議なもので、その頃感じていたのは、不安と安心が同時に存在している感覚だった。まだ足元が定まらない心細さは確かにあったけれど、同時に、誰にも急かされず自分のペースで過ごせることに、じんわりとした心地よさもあった。どちらか一方ではなく、その二つがずっと並んで自分の中にあったように思う。

日差しの差し込むカフェの席で過ごしていたあの頃の感覚は、今でもふとした瞬間に思い出す。あの落ち着かなさと心地よさが同居していた時間は、振り返ると案外悪くなかった。